メキシコ


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日記

5月25日早朝
サリーの車に送られ
サンフランシスコ空港からサンディエゴへ飛ぶ
カリフォルニアの空はどこまでも高く
力を合わせて背伸びをしても その手は けっして届くことはなかった

グレイハウンドバスで 国境の町メヒカリへ
景色は変わらないのに 道路は
アスファルトから土へ 赤茶色のつちへ
看板の文字が へんてこにくみあわされて まるで絵のようだ
ひとむかし前の 七つ道具のついたナイフを買う
驚いた MADE IN JAPAN
とつぜんの風が吹きまくるたびに くたびれた店のとびらに
かわいた砂ぼこりが へばりつく もう何年も何年も そんなふうに
たたかれ続けてきたみたいだ すっかりおいぼれちまって

のどはガサガサで 使うことばはただひとつ セルベッサ
アメリカ式のスーパーマーケットで
ばかでかい紙袋いっぱいに 食料を買いこむ
HOT WATER & COLD WATERのジャグチにわかれをつげ
なまみずの飲めない国へ その両極端のまんなかに立ち尽くし
手には水色のスーツケース 足にはすりへった黄色のビニールサンダル

なにを おもっていたのだろうか
太陽がかたむき もうすぐ沈むだろう その夕映えのなかで
ごちゃまぜの 整理しきれない思いで
みにくくふくれあがっていたじぶんを
鉄道駅の二等客用待合所にはいるために
南京袋いっぱいにつめこんだ衣類や穀物を調べられ そのために
長い列を作っているハダシのインディオの親子たちと
みくらべたりしていたのだろうか
それとも かっぱらいや下痢が気になって
神経をかたくしていたのだろうか

コンパートメントの一等客車と
いまにもおっこちそうな窓をあけっぱなしで
熱っぽい風をいれ むんむんとする熱気をしのいでいる
二等客車がしゅっぱつしたのだ


(21才の日記より)


「ソレ」とわかるもの・わからないもの 1995


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