1 日川高校校歌問題とは
          
 ・校歌の何が問題なのでしょう。なぜいつまでも問題に
           なったままなのでしょう。


日川高校校歌訴訟に至る経緯

 
 山梨県立日川高等学校校歌          制定 1916年
                             作詞 大須賀乙字
                             作曲 岡野貞一

 1 天地の正気甲南に     3 質実剛毅の魂を
   籠りて聖き富士が根を     染めたる旗を打振りて
   高き理想と仰ぐとき       天皇の勅もち
   吾等が胸に希望あり      勲立てむ時ぞ今
 
 2 至誠の泉湧き出でて    4 猛き進取の調べもて
   流れも清き峡東の        歌う健児の精神は
   水に心を澄ましなば       白根が嶽にこだまして
   未来の春は輝かむ       何時の世までも轟かむ

 1905年 生徒心得 
  第1条 本校生徒タル者ハ能ク教育ニ関スル勅語ノ聖意ヲ奉体シ校則ヲ守リテ師長ニ従ヒ礼節ヲ重ジテ廉恥ヲ励ミ毫モ学校ノ体面ヲ毀損スルコトナク徳義才能健康ノ三者ヲ円満ニ増進スルコトヲ務ム

 1950年 教職員・同窓会・PTAなどから校歌に疑問の声
  「日川高校校歌はあまりに軍国調である」
  「他の高校はほとんど改変しているではないか」
  「『天皇の勅もち』の校歌は軍国主義を鼓吹するものだ、という考え方が職員にも生徒にも、同窓会にも、PTAにも強かった」(第12代長田靖麿校長)

 1950年  「日川は日川さ、他校をまねる必要はないさ」−長田靖麿第12代校長の判断

 1972年頃  生徒総会あるいは臨時の集会の席で、生徒会長より校長へ
 質問「校歌について校長の考えを聞きたい」
 回答「質実剛毅で始まる節に出てくる『天皇の勅』とは、具体的には教育勅語の奉戴である」(町田茂雄第18代校長)

 1985年11月11日 山本昌昭第23代校長「日川図書館だより」に「校歌問題への提言」発表
 「こういう歌を歌って、お国の大事に殉じた時代もあったという歴史的事実を尊重して、歌い継ぐことを積極的に意義づける主張もあった。しかし、校歌には学校の教育方針も盛り込まれる筈だ。戦前、戦中ならいざ知らず、これから未来へ向かって羽ばたこうとする生徒には、それなりに胸を張って歌えるような歌詞でなければ困る。・・・ 私に課された使命の最たるものは、どうやらこの校歌問題との対決にあるらしい」

 1995年10月15日 第1回山梨県立日川高校校歌を考えるシンポジウム

 1996年4月28日 第2回山梨県立日川高校校歌を考えるシンポジウム

 1998年4月20日 「新校歌とともに21世紀を歩む日川同窓の会」(代表山本昌昭第23代校長)「公開の質問書」提出
 主旨「日本国憲法下の公教育が天皇主権時代の教育方針を謳う校歌を生徒に強制することは、許されることではない」
 回答 手塚光彰第28代校長
 「私にはお答えしようがないので、回答できない」
     天野建山梨県知事
 「学校の自主的判断に任されるべきもの」
     輿石和雄県教育長
 「学校の判断において行われるべきもの」
     文部大臣(町村信孝)・秘書官
 「設置者(県知事)の意見を聞いてください」

 2001年4月22日 山梨県立日川高等学校創立百周年記念式典挙行

 2003年10月30日 「県民17名―住民監査請求を行なう」
   「天皇の勅」失効確認を求める山梨県民の会会員山梨県庁を訪れ、県監査委員会に対し、「天皇の勅」の残されている日川高校校歌を違法・不当として、校長や教育委員、県知事らに弁済を求めて「山梨県職員措置請求書」提出。

 2003年12月26日 住民監査請求は「却下」
  理由―「請求の基礎となる違法性・不当性について憲法に違反すると主張しているが、憲法判断は司法に属する事項である」

 2004年1月22日 住民訴訟訴状提出 受理 遠藤比呂通弁護士を代理人に選定
          原告 山梨県民17名
          被告 山梨県知事 山本栄彦
 請求の趣旨
  被告は、訴外渡辺彬(前山梨県教育委員会委員)、志村彬(山梨県教育委員会委員)、金丸康信(同)、内藤いづみ(同)、曽根修一(同)、井上一男(同)数野強(同・教育長)及び鶴田正樹(山梨県立日川高校校長)に対して、2002年度に日川高校運営のために支出された学校運営費(一般会計)及び教職員の人件費のうち、違法に支出された1,094,715円、及びこれに対する2003(平成15)年4月1日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金および本件訴訟費用を山梨県に対して支払うように請求せよ。
 請求の原因
  原告らは山梨県民である。原告らは山梨県立日川高校が教育課程の実施にあたり、日本国憲法及び国会決議で排除、失効が確認されている教育勅語を「天皇の勅」として謳いこんでいる校歌を指導したり、歌わせたりすることは、日本国憲法に基づく公教育就中公立学校における教育活動として違法、不当であるから、そのための学校運営費及び教職員への人件費支出も違法、不当な公費支出にあたるとして、2003年10月30日に山梨県監査委員に監査を求め、12月26日付けで「地方自治法242条に定める住民監査請求の対象にならないために却下することと決定した。」との通知を受けた。
  被告は山梨県知事であり、地方自治法第240条に基づき、山梨県の債権を管理する権限を持っている。また、同法242条の2第1項第四号にいう執行機関として、山梨県職員の違法な行為により山梨県に損害が生じた時は、当該職員に対して損害賠償の請求をする義務を負うものである。

 2004年 2月24日  第1回口頭弁論
 2004年 6月 1日  第2回口頭弁論
 2004年 7月13日  第3回口頭弁論
 2004年 9月28日  第4回口頭弁論
 2004年11月30日  第5回口頭弁論
 2005年 2月15日  第6回口頭弁論
 2005年 3月22日  第7回口頭弁論
                裁判官忌避
 2005年 5月17日  第8回口頭弁論 結審

 2005年8月 9日   判決  甲府地裁 憲法判断を回避
  「原告らの主張は・・・公金支出の原因ないし目的となった行為についても、公金支出行為自体についても、何ら特定されていない。各行為が特定されていない以上、財務会計法規上の義務違反の有無を判断することすらできないのであるから、そもそも主張自体失当である。・・・そうすると、原告らの請求は、その余の点につき判断するまでもなく理由がないことに帰する(本件訴えは、結局のところ、日川高校関係者らの間に以前から論争のあった本件歌詞の当否という問題を、原告らの独自の見解によって住民訴訟の俎上に載せようとしたものというべきであり、地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものとはいえない。原告らの上記主張を採用し得ない以上、当裁判所は本件歌詞の当否について判断すべきではない。)。」

 2005年8月22日  東京高裁へ控訴
  控訴の理由
  1 控訴人の事実上及び法律上の主張は第1審判決事実欄摘示と同一である。
  2 しかるに原審裁判所が控訴人の主張を容れなかったのは失当につき、ここに控訴を申立てた次第である。

 2005年11月30日 控訴審第1回口頭弁論
 2006年 2月 1日 控訴審第2回口頭弁論
 2006年 3月 6日 控訴審第3回口頭弁論

 2006年 5月17日 判決 

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