| 栄 養 歳 時 記 |
| 11月 前 期 |
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| 八ヶ岳高原大橋より秩父方面を望む |
| カルシウムと鉄の充足とレチノール当量 |
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| 私は講演を依頼される時、バランスの良いメニューを示してほしいと要望されることがあります。 栄養学上の食事でのバランスとは、各栄養素が平均して充足されていること、均衡が取れていることを示します。 栄養素の充足を示すには円グラフであるレーダーチャートが最も理解しやすく、私も愛用しています。 レーダーチャートに示す栄養素はその講演題により選定します。 例えば、その講演の演題が「カリウム」に関係するならば、レーダーチャートの頂点の一つは「カリウム」を設定します。 一般的に、エネルギーと供に示す栄養素は、常に選択される(ドラマに例えるとレギュラーのような)栄養素があります。 たんぱく質、脂質、レチノール当量、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、カルシウム、鉄、総塩分の9種類で、エネルギーを合わせて10の頂点を持つレーダーチャートを作成することが多いようです。 その上で、その講演の演題により頂点の一つを交換するか頂点を増やして、論点にある栄養素の量を示します。 今年も色々な団体からの依頼でメニュー作成をし、講演時の配布テキストを作りました。その中でつくづく感じることがあります。 カルシウムと鉄の充足と、レチノール当量の関係です。 生活習慣病を予防する観点から、エネルギー過剰摂取にならないように配慮すると、体重に個人差がある母集団の中だとしても、およそ1日1800kcalのエネルギー基準が汎用として使えます。 1800kcalの中でたんぱく質、脂質、炭水化物のおよその比率は たんぱく質(P):脂質(F):炭水化物(C)=15:25(以下):60 が適用され、食品学と調理学を併用し美味しいメニューを作成します。 第六次日本人の栄養所要量を基本に、もっと正確にPFCバランスを示せば、たんぱく質のエネルギー比率は13%ですが、汎用として使用するには15の数字で問題はないし、あまり半端ですと覚えにくいので、私は15%を適用しています。 カルシウムや鉄などミネラルは微量元素として体の機能を調節したり、骨やヘモグロビンの構成素なので充足しなければならない大切な栄養素です。食事より摂取するのが基本です。 カルシウムの充足には大変な努力とテクニックが必要です。 カルシウムは、国民栄養調査でも読み取れるように、日本人に不足がちな栄養素の一つであり、それは日常の食事から摂取しにくい事を示しています。 PFCバランスを保持し、たんぱく質を所要量に合わせカルシウムと鉄を充足させると、そのレーダーチャートのレチノール当量が突出する傾向にあります。 たんぱく質過剰を問題としないのならば、牛乳などの乳製品を多く使用するメニューを作成すれば良いのです。簡単です。 しかし、第六時改定日本人の栄養所要量ではたんぱく質過剰の現代の食生活を是正する意味で、これより以前の栄養所要量より少ないたんぱく質量を所要量としています。 主菜として使用したい肉類や魚類との関係からも、カルシウムの充足のためだけに牛乳を増やすと、たんぱく質の摂取量が所要量を超えてしまうのです。 エネルギー摂取量も1800kcalに設定していますので、ここも考える必要があります。 そこで、たんぱく質の含有量が少なくカルシウム含有量が多い食材として、緑色葉物野菜が選択されます。 特に小松菜は100g当りカルシウム含有量170r、たんぱく質1.5g、しかもエネルギーは15kaclで、魅力的な食材なのです。鉄を考えれば、ほうれん草です。 レチノール当量が突出する原因はここにあります。 レチノールとはビタミンAの化学名です。当量とは相当する量のことで、βカロテンなどプロビタミンA類も合算することを意味しています。緑色葉物野菜はご存知のとおりβカロテンの含有量が多い野菜です。 カルシウムは毎年の国民栄養調査で必ず摂取不足が報告される有名な栄養素です。 レーダーチャートは一目で各栄養素の充足が読み取れ、レーダーチャートは限りなく円を描くほうがバランスが良いことは誰でも分かります。バランスが良いことを示したグラフは円を描かなければ説得力がありません。そして、耳慣れた不足がちな栄養素に目が集中するのも世の常です。 エネルギー1800kcal、たんぱく質67g、カルシウム600r、鉄10rで充足してほっとすると、そのレーダーチャートはレチノール当量が角のように突出する場合が多く、頭の痛い問題です。 レチノール当量として算出された値はその食事ではβカロテンの含有量です。βカロテンはその人のビタミンA必要量に応じて体内でビタミンAに変換されます。 βカロテンはビタミンAに変換されなければ前駆物質であり、ビタミンAでないのでビタミンAとしての過剰の問題は考えなくても良いと多くの栄養学者は説明しています。 その中で、私は少し前までビタミンAに変換されないβカロテンの代謝に興味をもっていました。βカロテンは脂質であることを考えると、水溶性のビタミンCの様に容易に排泄できないと考えるからです。 ビタミンAに変換されないβカロテンの代謝は、文献を調べてもあまり明確な記述がないことも手伝って、ますます興味がわいていました。 つい先日、平成16年10月14日、人間はビタミンAに変換されないβカロテンを、何かの代謝メカニズムで体外排泄することを、独立行政法人健康・栄養研究所のS先生にお答え頂きました。S先生は第七次日本人の食事摂取基準( 旧名 栄養所要量 )策定・運営リーダーです。 残念ながら、代謝のメカニズムはまだお答え頂ける先生に巡り合っておりません。メカニズムは別として、「ビタミンAに変換されないβカロテンは代謝され体外に排泄される。」ここをお答えくださったことに、心から感謝しています。 体内にβカロテンが蓄積過剰となり、過剰の害が出ることは考えなくてもよいことになります。 安心して講演できます。講習会の講師として、疑問を持ちながらお話しするほどいやなことはないのです。 しかし、レーダーチャートで角のように突出することだけは事実で、講演でその理由と代謝されるので問題はないことを、毎回説明しなければなりません。聴講者には説明できても、講演を聴講しなかった人に資料が渡ることも考えられますし、その時「この食事はバランス悪い」との誤解を受けるかもしれません。 レチノール当量には許容上限摂取量が決められています。レーダーチャート作成の時、レチノール当量だけ数値の設定を許容上限摂取量の範囲にある数値と置き換えるときれいな円を描くことが可能です。しかし、ここだけ意味の異なる数字を設定するのは気が引けます。 悩み多い問題です。 |