脱サラ、充実の高原生活
大谷康一、洋子さん夫妻(ペンション経営)
(文・写真 森正美氏)
「会社を辞めて、ペンションを始めるぞ」――始まりはそんな夫のひと声だった。山梨県北杜市高根町清里に移り住み、ペンションを切り盛りして間もなく13年になる大谷康一さん(56)、洋子さん(51)夫妻。脱サラの夫と都会育ちの専業主婦の二人三脚。初めての接客業に戸惑い、雪かきや水道管の凍結など、慣れない生活につらい思いをしたこともあった。が、親類付き合いしている常連客も増え、今は充実した高原の生活を満喫している。団塊世代の大量定年を見据え、「一足早いセカンドライフに踏み出した」と言う。
康一さんは大阪市、洋子さんは兵庫県西宮市生まれ。ともにサラリーマン家庭で育った。康一さんは大学卒業後、京都に本社がある繊維会社に就職し、東京支店に配属。洋子さんは大学卒業後、大手商事会社に勤務した。
結婚したのは康一さん34歳、洋子さん29歳の時。「都会のサラリーマンが第一条件で、共稼ぎはせず、子供にはピアノやバレエを習わせて……」(洋子さん)。そんな暮らしを夢見て、千葉県浦安市のマンションで新婚生活がスタート。間もなく長女も生まれたが、そこでの生活は長くは続かなかった。
高度経済成長を支え「企業戦士」と言われた団塊の世代。康一さんも、帰宅は深夜、早朝出勤。土日も出張続きで、ろくに休みも取れず、娘の寝顔しか見られない生活が続いた。
「定年で会社から放り出されたら、自分には何も残らない」。そんなサラリーマン生活に疑問を抱き「自分の時間が持て、家族と一緒に自然の中で暮らしたい」と、ペンション経営を考え始めたのが30代後半。洋子さんの反対を押し切り、39歳になる直前に退社。直後に、長男の妊娠が分かった。
失業保険やアルバイトをしながら建設地を物色。清里高原で全室に天窓が付き、ベランダから八ケ岳をのぞめる理想の物件に巡り合って購入した。92年5月、ペンション「エストレリータ」(スペイン語で「小さな星」の意味)をオープンした。
初めての「商売」。地域社会とのかかわりなど戸惑うことも多かったが、洋子さんが趣味で集めたクリスマスグッズを飾って「一年中クリスマスのお宿」をキャッチフレーズにPR。無農薬野菜を使った料理でもてなし、天体観測や、コルク細工の体験教室を開くなど試行錯誤を重ねた結果、徐々にお客も増え、経営も軌道に乗った。
最初は愚痴をこぼしていた洋子さんも「自然と向き合ってスローライフを楽しみ、お客様と楽しい時間を過ごせるようになりました」とほほ笑む。
「ネクストエイジに掲載されたセカンドライフ」
06.02.13 脱サラ、充実の高原生活
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