蟻さんの荷物運び   ( 2002年1月著 )


 庭でボーっとしていたら、蟻さんが荷物運びをしているのに気付きました。

 蝶々の死骸を巣に持ち帰ろうと、十五六匹の蟻さんが懸命に運んでいました。蟻さんの荷物運びを眺めていると、面白いことに気付きました。蟻さんたちは、蝶々の周りに放射状に群がって、それぞれ思い思いの方向に引いているのです。巣の方向に引いているやつがいると思えば、全く反対の方向に引いているやつもいます。また、横の方向に引いているやつもいます。見ていると蝶々は回転しながら何とか巣の方向に進んで行きます。今まで巣の方向に引いていた奴が、しばらくすると反対側に引いていたりします。それでも不思議と蝶々は巣の方向に少しずつ進んでいきます。「全員で力を合わせて同じ方向に引けば、もっと楽にスピーディーに運べる物を、なんて馬鹿な奴らなんだろう。」と思いながら見ていました。

 しばらく見ていると、土に埋まった石の所で蝶々が動かなくなりました。石に引っ掛かたのです。「どうするだろう?」と見ていると、蝶々の動きが横方向に変わり、石をさける形で進んでいきます。「何という自然の妙!」。「自然界は環境に最も適応した者を選択する」これが進化論でした。蟻たちが、力を合わせて同じ方向に引くより、周りを放射状に引く方が、結果としてよりよい方法だからこそ、今の蟻たちが生存しているのです。

 群のリーダがいて、群に号令をかける事が出来るまで発達していない蟻たちにとって、「周りを放射状に引く」と言う手段は、引いていく方角に障害物があった場合の危険分散になっているのです。

 選択と集中、皆で力を合わせて同じ方向に引くのは、確かに効率が良いでしょう。でもそれで本当に良いのでしょうか?


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蟻さんの荷物運び