インターネットの高速接続 (2000年1月 著)


 

1.ボトルネックは何処に

 インターネットに低価格で高速に接続する為のボトルネックは、加入者線(アクセス回線)にあると思われています。いわゆる「ラスト・ワンマイル」問題です。では、この「ラスト・ワンマイル」が解決すれば、満足のできる高速性が得られるのでしょうか?「ラスト・ワンマイル」問題解決の手段として、ADSL・無線方式・光ファイバー化・CATVケーブルの利用等々が提案されていますが、本当に快適な環境を手に入れることができるのでしょうか?

2.ピークファクター

 私が入社した当時の通信回線は、まだアナログの回線が主流でした。基幹回線のアンプを設計する場合「ピークファクター」と言う考えを元に設計しました。単純に考えると、一人の音声を増幅するのに1V(ボルト)のダイナミックレンジが必要な場合、1000人の音声を増幅するためには1000Vのダイナミックレンジを必要とします。しかし1000Vのダイナミックレンジを持つアンプなど現実的では有りません、そこで1000人が話をする場合でも、実際に音が出ている時間は全体の数%で、かつ音と音のピークが重なる確率は小さいので、それを無視しようと考えました。この無視する割合をどの位にするのか、またどの位にすればアンプのダイナミックレンジをいくつまで下げられるかを理論的に示したのが「ピークファクター」です。

 簡単にいうと、片側1車線の道路を10本合流させる場合に、片側10車線の道路を造らず片側5車線ぐらいの道路を造っておけば、安く造れるし特に問題も起こらないだろうということです。

3.プロパイダーのバックボーン

 プロパーダーまでの通信回線(電話加入者線)は田舎の畦道のような物でした。とても快適な環境とは言えませんでしたが、最近ここに新しい技術を利用して(ADSL・無線・CATVケーブル・光ファイバー・等々)片側1車線の道路ぐらいにできるようになりました。これで畦道をテクテク歩いていたのが、車でビューンと行ける事になるはずでした。

 ところが、プロパイダーでは畦道を何本も集めて、片側1車線ぐらいの道路をバックボーン(基幹回線)として商売をしています。(料金もこれで決めています)従ってプロパイダーまでのアクセス回線が片側1車線になっても、合流した先が片側1車線では大渋滞が発生して、「畦道を歩いていくのと速度がほとんど変わらない」と言う状態になります。

 プロパイダーの基幹回線を片側3車線の高速道路にすれば本当に快適になるのでしょうが、それでは現状の料金で維持をする事ができなくなります。

 インターネットのスループット向上は「ラストワンマイルからインターネットバックボーンへ」と言われる様になってきました。

4.NTTのインターネット定額接続の値下げ

 NTTでは、インターネット定額接続を始めるのに当たり、基幹回線には片側3車線の高速道路が必要だろうと考えていました。ところが、アクセス回線に片側1車線の道路を提供して実験的に開始したところ、この片側1車線の道路には、予想に反してたまにしか車が通らないことが解りました。そこで片側3車線の高速道路をやめて、片側2車線のバイパスぐらいの道路で済ませることになりました。当初考えていたよりだいぶ安い費用で維持できることになり、結果的に料金の値下げになりました。(半値以下ですよね!)

 アナログの時代には「ピークファクター」というのがあり、どのくらいの太さの回線を造ればよいか正確に計算できたのですが、まだ歴史の浅いインターネットの場合、理論的根拠も何もなく、やってみないと解らない事が多いのです。

以上


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