水銀と他の金属との化合物(合金)を総称してアマルガムと言います。水銀には、金・銀など他の金属と溶け合って、合金を作りやすい性質があります。
金と水銀の化合物(合金)を金アマルガムといいます。金を採取する最も簡単な方法で、かつ最も古くから知られていた方法が、この金アマルガムを使用する方法です。金を含んだ鉱石を砕き、水銀と混ぜ合わすと金と水銀の合金が出来ます。これを熱すると水銀が蒸発して金だけが残ると言う物です。また、銅などにメッキをする場合、現在では電気メッキが主流ですが、電気がない古代には金アマルガムを塗り、火であぶって水銀だけを蒸発させてメッキする方法が採られました。
平安の昔、日本に仏教が伝わり仏像を沢山作りました。当時の仏像はそのほとんどが金属(銅)製で、金メッキが施されていました。金アマルガムでメッキしていたわけです。そんなことをしていると発生する問題があります、有機水銀による水俣病の多発です。その結果ときの帝は平安遷都を余儀なくされました。昔の人の科学知識は侮りがたく、都周辺で発生した奇病の原因が有機水銀による物で有ることを知っていた集団がいて(丹生一族という金属の採鉱に長けた一族)、それ以後日本の仏像は木を彫り、金箔を張って作るようになりました。
昔から金は権力と富の象徴でした。金を手に入れる為には水銀を手に入れる必要があります。この水銀の採取は、硫化水銀(印鑑を押すときに使う朱です)を熱すると、水銀だけが蒸発してきますので、これを冷やせば水銀が取れます。硫化水銀が鉱石の形となった物を丹砂(たんしゃ)と言います。丹沢などと呼ばれる地域では丹砂が沢山採取できた物と思われます。
弘法大師(空海)が開いた高野山の境内には、丹生姫(にゅうひめ)を祭る丹生神社(にゅうじんじゃ)が有ります。また四国巡礼の山道は硫化水銀の鉱脈がある場所を結んでいます。当時の仏教、特に真言密教は科学技術の最先端を教えていました。空海が何を知っていて、どういうことをしていたのかおぼろげながら想像出来ます。
昔永遠の命を得るためには仙人になる必要があると考えられていました。仙人になるための薬に「神仙丹」と言うのがありました。そうです「丹」=水銀です。今でも薬を何々丹と呼びますが、その元が水銀だったと言えます。
昔を考えると、錬金術師だの、仙人だの、(仏教も含まれるのかな?)おどろおどろしていますが、ある種の科学知識は驚くほど発達していて、現代とさほど変わらない物があったと思います。但し、この科学知識はある種の集団での秘密となっていました。この秘密を漏れ聞いた人々、あるいは科学能力を見た人々が、神の力あるいは妖術だと考えたものと思われます。
仏教寺院や神社の柱がなぜ朱色に塗られるのか(朱ですよ)? 修験者はなぜ山奥ばかり歩くのか? なぜ日本全国に丹生神社がたくさんあるのか? なぜ中国の高貴な人のミイラは有機水銀に汚染されているのか? 考えるとおもしろいことがたくさんありますね。