第10回特別展
『縄文人の顔』展示解説

平成10年10月3日(土)〜平成10年11月29日(日)



 釈迦堂遺跡からは、日本で一番多い1,116個体の土偶が出土している。その全てが女性像であると言われていて、それらは全部ばらばらに壊された状態で出土し、顔だけで180点程ある。また土器の縁に人の顔のモチーフが表現されたものもある。 これは顔面把手(がんめんとって)付土器と呼ばれている。この顔面把手は土器の内側を向いているものが多く、あたかも中の食べ物を見張っているようである。

 顔面把手のついた土器は顔の模様だけでなく、土器全体が女性像を表現していると言われている。顔面の付く土器の器面には人体らしきモチーフのある土器もある。妊娠を表すかのように器面が丸く作られている物や、出産を表現しているような土器まである。子供を生む能力のある女性を食べ物を作り出す土器に表現したのであろうか。縄文人の安産や子孫繁栄に対する祈りが込められているのかもしれない。

 釈迦堂遺跡から出土した顔面把手は土偶と同じように、ほとんど壊された状態で発掘されている。顔の部分だけ埋められていたと思われる物もある。何故壊された状態でみつかるのかは諸説あって定かではないが、使い終わった土器が捨てられる時に、顔面把手だけ埋葬されたのかもしれない。釈迦堂の土偶は壊されるために作られていたと考えられているが、顔面把手も同じように壊されるために作られていたのかもしれない。

 山梨県における最古の顔の表現のある土器は、白州町雑木遺跡出土の縄文時代前期末(約5,000年前)の土器である。中期に入ると土器の縁に顔面らしき模様が付き、次第に発達、そして顔面把手(がんめんとって)と呼ばれるようになり、土偶状のものが付いたり、土器の胴部に人体のモチーフが表現された、人体文土器も表れ、顔のついた土器は中期中葉に盛行する。そして中部地方独特の水煙文把手土器(すいえんもんとってどき)へと変遷していくのである。

 土器につく把手は何らかの意味をもって付けられたと思われ、その役目が終わると把手だけ取られたのかもしれない。把手だけが埋葬されている例も少なくない。中でも顔面把手付土器は自らの身体から食物を生み出す女性とする考えがある。その役目が終わると顔面把手だけ壊され、埋葬されたと考えられる。蛇や猪もまたこの女性の頭部に付けられることがあり、この女性の別の姿であるとも言われている。

 土偶は縄文時代の女性を表現したものであり、ばらばらに壊されて出土することが多いが、土偶そのものが一つの土製品である。顔面把手(がんめんとって)とは土器の縁についている人の顔のことである。これも顔の部分だけ壊されて出土する例も多い。土偶の顔と土器についた顔は似ているものもある。それぞれにどの様な祈りや願いが込められて作られたのかは定かではないが、どちらも縄文時代の女性像を図り知る上で貴重な遺物である。



E-MAIL