男性でも乳ガンの恐怖      リストマーク戻る

 私の家では子猫を飼っている。前の猫には肺の奇形があり、普通の猫より肺が小さく長生きは出来ないと獣医さんに言われていた。欠伸は良くしていたが、それでも元気で性格はおとなしく人間の言葉も良く理解する利口の猫だった。獣医さんが「去勢するため麻酔をかけると死ぬかもしれない。」と言うことで、去勢せず自然のままでいた。
 猫を飼い始めて4年目の冬。寒猫という言葉がある。この時期になると猫は恋をする。雌猫を求めて何日も帰ってこない。そしてある日、畑で死んでいるのを近所の人が知らせてくれた。寂しい、かわいがっていただけに無性に寂しい。手厚く葬り、1ヶ月の供養をした後、犬猫の交換会(野良猫・野良犬の子供の里親捜し)で子猫をいただいてきた。
元気な健康の生後2ヶ月の子猫。しかし、甘えたりじゃれる。遠くから走ってきて、私の足にかじりつき、そのまま駆け上がり、胸を経過して肩口に上る。ズボンをはく場合、すぼん下や、ポロシャツの下に下着を着けていないと爪で傷だらけになってしまう。手や足、胸にも猫のひっかき傷が着いている。
 猫を飼いだしてから2ヶ月。猫も生後4ヶ月になった。その頃、胸(左の乳房)が痛み、リンパ腺も腫れてきた。胸にしこりもある。猫のひっかき傷の炎症だと当初思ったが、いつまでも引かない。

 男性の乳房が堅くなり、痛くなることがある。変声期の頃だ。中学1年生の時だった。ホルモンの関係だろう。しかし、今、ホルモン剤の入っている薬は飲んでいない。わずか、血圧降下剤(カルシューム拮抗剤)を服用しているのみだ。
炎症が原因ならば、猫のひっかき傷。そして、もう一つ考えられるのは乳ガンである。私は以前、健康管理センター(人間ドック・巡回検診)に4年ほど勤務していたことがある。当然、男性にもまれに乳ガンがあることは知っている。何となく胸が痛く感じてから1ヶ月半であるが、リンパまで来ていれば、かなり進行していることになる。
 よく考えるに、放置しておくととんでもないことになりかねない。健康管理センターには最新式のデジタルマンモグラフィー もあることから受診してみるか、と思い立った。

 ネットで、男性乳ガンという項目を見ると、イギリスでは男性が乳ガンで毎年70人が死亡している。日本でも、発生率は女性の100分の1程度であるが男性乳ガンの例がある。男性乳ガンは男性に乳ガンの知識がないから手遅れになるケースが多い。乳ガンに関する検査や治療方法も女性と全く同様の事などが書かれていた。

 翌朝、病院で受診することの意志は変わらなかったが、甲府の健康管理センターまで行くよりは地元の市立病院で受診することにした。午後1時より受診だと思って12時40分頃受付に行くと、12時30分までが外来受付であるが、午後からは先生がオペに入ってしまうので、午前中の受付で見てもらえるか確認してくれるという。
 そして受診、触診、超音波(エコー)検査や血液検査それに問診をする。先生に「何か薬を飲んでいるか。」と聞かれ 、「血圧の薬を飲んでいます。」と答える。薬の名は調べると「ノルバスク(5)」
 この薬の副作用として”乳房の女性化”といってこのような現象が起こることがあること。超音波検診 によると炎症は見られるが腫瘍は見られないから大丈夫と思うが、炎症を沈めるため、抗生物質等を処方するから5日間服用すること。5日後来院すること。もし痛みが引かず、傷むようだったらすぐ来院すること。血圧の薬については先生と相談して変えた方がよいことなどを教えてくれた。

 血圧の薬について相談するため医院で受診。友人でもある主治医は「当院ではカルシューム拮抗剤で初めての例だ。」という話と共に乳房の女性化の副作用の無い「カルデナリン錠1mg」という薬を30日間飲んでみることにした。

 最近の新薬は良く効くが長期の臨床検査をしない場合があり、副作用でガンが発生することもあるという。記事もネットに載っていた。薬の副作用は恐ろしいものだと心から感ずる。薬は飲んでいるが、痛みはまだ消えない。血液検査結果も聞きたいので、来週には受診するつもりでいる。

 ちょうど1週間経つ。痛みも和らいできた。市立病院で受診する。血液検査の結果、肝臓に異常はなかった。肝臓が悪くてもこのような現象が起きるそうだ。「やはり薬が原因だと思われる。今後、しこりの場所が動いたり、痛くなったら来院するように。当分様子を見てください。」と先生がおっしゃった。今日は診察のみで、投薬はなかった。

 しばらく様子を見ることとなったが、男性でも乳ガンの恐怖、初めての経験であり、薬の副作用の怖さも、これまた初めての経験だった。 私にとって今後の良い教訓となりました。(終わり)

健康管理センターの所長に「女性化乳房」についてプログで質問した回答を添付します。

女性化乳房について教えてくれとの書き込みを頂きましたのでここに回答を書きます。思春期に乳房が腫れた経験の方は多いと思いますが、それは生理的なもので1〜2年で治ります。高齢になり男性ホルモンが少なくなり結果として女性ホルモン優位となって乳房が腫れてくることがあります。肝臓が悪くて女性ホルモンを処理し切れなくて張れてくることもあります。胃潰瘍の薬、血圧の薬(ノルバスクも含まれます)、抗結核薬、糖尿病薬、精神科の薬、最近売り出された飲む毛生薬、プロペシア等を服用した場合にも女性化乳房になることがあります。これらの薬を服用すれば必ずなるというのではなく、大多数の人はそうなりませんが、一部の人に女性化乳房が出現します。対策はこれらの薬を服用している人は主治医と相談して作用が同じ別の薬に変えてもらう必要があります。甲状腺機能低下症や睾丸その他の悪性腫瘍などでも出現することがあります。様々な原因で出現しますので、その原因を明らかにして対処する必要があります。女性化乳房と思っていたら乳がんだった例もあり、超音波検査などできちんと診察してもらう必要があります。一般に女性化乳房ではリンパ節が腫れてくることは稀です。別の原因があるかもしれません。疑わしい場合は乳がんの検査法である、針を刺して吸引し、細胞検査を行います。ある患者さんはその検査をした直後腫瘍が小さくなりだして、今は消失しています。考えられる原因が多すぎて診断が極めて難しい病気ですが、信頼できる外科医にきちんと検査してもらって、心配ないと言われたのなら安心してよいと思います。