続・鳥と私の間柄
    三浦光宏  平成7年 JA山梨厚生連 「清流」に掲載

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onndori   
 
 が鳥好きなのは、酉年のせいかもしれない。こんな下り、で3年ほど前「鳩」との出会いについて書いた記憶がある。「帰巣性」500q〜1,000qもの遠方から巣に戻る科学でも解きあかせない不思議の能力のある鳩は鳥類の中でもすばらしい存在である。人なつこい鳩のすばらしさに今もなお愛情を感じている。

 この鳩の飼育に大きな転機が訪れた。オオム病になって点滴を一週間も続けた私であるが、それは飼育上、私の技術が未熟だったためと、鳩の飼育を頑として続けていたのであったが、真冬のある時、ちょっとした油断から鳩小屋に野良猫が入ってしまい、残酷にも数十羽もの鳩を殺してしまったのである。この仕打ちに家族が嘆き、私が非難されたのは勿論であるが、鳩は恐がって決して鳩小屋に入ろうともせず、家の屋根を住居としてしまった。

 雪の降る厳寒の冬、それでも雪の積もった屋根に寝泊まりする鳩達、手作りの鳩小屋の設計にも問題があったと思うのではあるが、猫に1度狙われたら防ぎようもない。どんなに仕掛をしたところで、一晩中かかっても、猫はどこからでも進入してしまう。屋根の鳩も何度か狙われて、屋根とて安住の地ではなかった。 そうしているうちに、昼間は屋根で遊んでいる鳩もなぜかしら夜はどこかへ飛んで行くようになり、50羽近くいた鳩も30羽、20羽、10羽と少なくなり、最後には駐車場の屋根裏に3羽のみ残るようになった。

 でも、朝になると数十羽が電信柱の上で家族が起き餌を蒔くのを待っていて、一日遊び、そして、夕方になると、どこか西の空に飛んで行く。どこへ飛んで行くのかと思っていたところ、「家の足環をしている鳩が、笛吹川にかかる鵜飼橋近くで遊んでいたよ。夜は鵜飼橋の下で他の鳩と寝て居るんじゃあない。全くかわいそうにお父さんは。」と娘が叉も怒りながら報告してくれた。あそこなら数十羽の先客もおり、あそこなら安全だ。
 こうして、寝泊まりしたり幼鳩を育てる場所は鵜飼橋の下、餌を食べたり遊ぶのははわが家という、二重生活の、そして放し飼いの奇妙な鳩との関係が始まっていった。

 放し飼いの鳩に最初に興味を持ったのは父である。撒き餌をしては手なずけている。畑にもポケットに餌を忍ばせていくようになった。物好きな鳩の数羽は父を追いかけてついて行く。そのうち、隣のおじさんが畑で働いていたら鳩は顔をのぞき込み、父でない事がわかると残念そうに一声「クウッ」と鳴いて飛んで行ったなんていう話も聞くようになった。
 今では鳩は父の大ファン、「さあ、おいでおいで!」と大声で叫べば肩でも手の上でも乗っかって餌をついばんでいる。腹が減れば昼寝をしている父におやつの催促をする始末。この一日を通して鳩に接している父と鳩とのスキンシップは、サラリーマンの私にはとてもできない芸当で、鳩との信頼度の深さは私との比ではなく、鳩を通して人生や年輪の深さの違いまでをつくづく感じさせられるこの頃です。

 こうして、少ないときでも30羽、多いときには40羽近くの鳩が毎日我家を訪ねてもう2年、鳩の代も変わり我が家の足環の付いている鳩も少なくなったが、その子供達や新しい仲間も加わった付き合いが今もなお続いている。
 では、あの鳩小屋は今はどうなっているかって! 新しい住人がちゃんと居るんです。その名はウコッケイ、「鵜骨鶏」と書く中国の鶏です。雄のとさかがケイトの花のように見事で足にも羽が生えてます。雌の卵は、黄身の色も濃く、栄養が豊富です。割り箸で持ち上げても黄身がつぶれないほど丈夫です。卵は一個300〜500円もするという噂の鶏です。成鶏を一ペアーから二ペアーに増やして、今では親子交えて28羽の大所帯、早朝からコケコッコ!コケッー!コケコッコヨー!と個性ある多重奏で賑やかです。名古屋コウチンやブリモースの鶏達もいます。それにカルガモまで庭で放し飼いをしています。今や我が家は鳥達の動物園です。 観光葡萄園を開園している我が家ですが、雑誌やテレビ朝日にも取り上げられ、訪れる都会の観光客も葡萄狩とともに、鳥達との出会いを楽しんでいます。

 鳥の飼育そして繁殖、この過程の中には鳥達の生態の探求とともに、外敵である犬や猫、鼠、そしてイタチとの戦いもありました。厳しい外敵との知恵比べ、そして攻防、サバイバルゲーム、まだまだ充分な環境が整ったとは申しませんが、これからも自然により近い環境の中で鳥達と付き合い、心の交流をはかって行きたいと思います。
 人生、そして愛情、この心の交流と信頼感とは、動物と人間との枠を越えても通じ合える、万国共通の平和への合い言葉とも思われるからです。


(参考)鳥類を飼育する場合、その糞等の粉塵を吸気したりすると、オオム病等発病することがあります。特別な注意はいりませんが、ペット小屋の掃除の場合には、粉塵を吸気しないようマスクを着用するとか、ペットと接触した場合には、手洗い、うがいの励行等、日常的な注意が必要です。