HPによる人間関係の広がり  三浦光宏  山梨県厚生連文芸誌・平成15年1月号発行 「清流」掲載原稿  

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 4年前の今頃、女房がどこから聞いてきたのか「お父さん、これからの時代はインターネット時代ですね。インターネットで観光葡萄園をPRしたら。」と突然言い出した。 私のパソコン歴は長い。もう20年にはなろう。 ワープロ時代から興味を持ち、MS・DOSを経て、Windows3.0時代からの付き合いだ。 そしてYBSやUTYそれにNTTのメディア関係の友人が多い。メールやインターネットの話が時々出たが、実用段階になり一般に普及するのには、まだまだ時間がかかるだろうと考えていた。
 
 実は以前、高価なモデムを買い込み”パソコン通信”というのをやったことがある。現在のメールとは異なり随分面倒で面白くないものだった。だから興味は持ちつつも、インターネットへの取り組みには二の足を踏んでいたのだ。 しかし、物好きで好奇心一杯の私は、女房の突然の言葉にいつかしら動機付けされ、調べるだけはやってみるかと、東京に出張の時「ヨドバシ電気」で、インターネットに関するCDを購入し、研究してみた。それで、HPのイメージはおぼろげながら感じ取ることが出来た。
 しかし、ワープロソフトでもHPを作ることは出来そうだが、HTMLという専門言語があり、これをマスターしなくては細かい設定が出来ない。そこで、専門書を購入したがなかなか難解であった。

 コンピューターの専門雑誌を見たり、パソコンの販売店を回り歩くうち、HPを作る専門ソフト「IBMホームページビルダー」の初版に出会うことが出来た。また、甲府の「池川総合葡萄園」のHPを見て、このサイトを目標にやってみようという気になった。池川さんは独学という。 私もソフトを購入しマニアルを読んではテンプレートによる実戦を重ねた。

 我が家は、父が開園してから観光農園30年のキャリアと、「世界の葡萄 豊玉園」というキャッチフレーズを実戦しており、観光農園としての特色と石和という地名を生かした旅館との提携、それに、老舗としての固定客を持っていた。
 しかし、バブルの崩壊、企業の招待旅行や、電機メーカーの販売促進会などのイベントも少なくなり、バーベーキュー等の大がかりな経営方法にも徐々陰りがに生じて、経営の転換に迫られていた。

 HPの作成には、当時には新デザインのパンフレットをモチーフに、我が園の特色をPRしたらどうかと始めたら、4P程度の原本が完成した。
 モデム付きのPCを購入してから6ヶ月、HPを手がけて3ヶ月の1999年6月、自力で初版をアップロードする事が出来た。勿論、どうしても解らないことは、職場に出入りしている業者で個人的に長い付き合いをしている友人に聞くことが出来た。これは独学で学ぶ以上、大きな心の支えになったことは言うまでもない。
 また、新しいページを作る度、更新する度に、マスコミ関係に勤務する親友から第3者的のアドバイスと校正をしてくれたことも大きい協力だった。
 
 それから、新しいページを次々に作成し、1年目にして目標の5000アクセスを得た。この、5000アクセスのうち、おそらく私と親友のアクセスで1000は数えていたと考える。我が子のようにHPを愛し育てた結果でもある。
 
 検索エンジンの登録も熱心に行った。私のHP開設を知った近所の旅館主からメールを頂き、彼らの仲間との交流により、HPを通じた情報交換により新しい仲間が出来、新たな提携旅館の輪も広がっていった。予想しなかった広がりでもある。
 アクセスを増やすため懸賞も始めた。一つには山梨県の果物をPRしたいという夢もあった。6月から10月まで毎月2人の当選者を生んだ。そして年間総合クイズの敗者復活戦。それと、来園者プレゼントである。賞品は、当園で生産された「世界の葡萄詰め合わせ」等で人気が高かった。当選者からは喜びのメッセージが寄せられてくる。それらもHPで一部紹介している。

 ページが徐々に充実し、果物に関する総合サイトとしての位置付けが進む毎、アクセスは徐々に増え、他県の教育委員会やフルーツエンジンや、山梨県のHPからもリンクの要望が届くようになった。
 読者からのメールも年200件は楽に越え、情報発信側として読者からの反応が伺われ、私は、いよいよインターネット時代にはまってしまった。
 インターネットの楽しさは、ただ見るだけでなく、相互通信による。お客様の問い合わせや、来て楽しかったというお礼のメールに励まされ、女房と相談しつつ、施設の充実や更なる園の特色造りを試みた。

 それは、雨天対策、売店屋根の増築や、私の手作りによる電信柱の掘っ建て小屋「豊玉庵」の建設、ハンモックの常設、160mの地下からわき上がる湧水を使った池の建設、滝を作り酸素補給のうえ、池に金魚やメダカの飼育、ニワトリやカモ、うさぎ等小動物との遊び場の建設等々だ。とにかく、お金をかけずに手作りで「遊び心を持って楽しめる観光園」づくりである。お客様には、家て取れた果物や野菜のサービス。簡単な手料理のごちそう、世界の葡萄を畑を巡回しながら食べる「グルメツワー」のサービス。等々いろいろ考えたみた。
 
 お客様からのお礼のメールも増え、お陰様で、TBS「王様のブランチ」を始め、YBS・UTY・NHK等TVの取材や、いたずら心で作った「i−モード」によりiモード雑誌からの取材もあり、ベストサイトにもランクされるようになった。
 今では、シーズン中には1日に250から300ものアクセスもあり、4月から10月中旬までに18,000以上のアクセスを頂いた。 正に、当園はインターネットを新戦略としての経営に転換したのだ。

 「世界の葡萄 豊玉園」のサイトは今や公式サイトである。公式サイトとしてURLやE−MAILアドレスを公開している。そのため、公式サイト故の妨害や迫害もあった。
 小さくは迷惑メールやウィルスのたぐいであるが、大きくは掲示板荒らしやハッカーの部類である。HPを壊されたショックは大きい。でも、すべて自力で復旧し、次の対策をする。これも、公式サイト故の試練である。また、HP上にお客様の名前を掲載する場合特定できないようプライバシーを守ることも公式サイトとしてのエチケットでもある。
 
 心ない迫害もあるが、システムエンジニアの方から楽しいHPであることの便りとともに修正個所を知らせていただいたこともある。独学故、手抜き工事もままあり、メールをやりとりするうちに、いつしか友人になり当園に家族揃って遊びに来ていただいた。その方は、帰宅後、IBMホームページビルダーのお試し版をわざわざ入手して、私の質問事項を研究し回答してくれた。思わず、頭が下がる。 

 さて、世間では無登録農薬の使用問題や「食の安全・安心システム」が話題となっている。
勿論、責任有る栽培と防除管理をしているが、これからはトレーサビリティー(消費者の段階から生産現場における栽培・防除・収穫・出荷にかかる記録を遡及調査できるシステム)が平成15年度から導入すると政府筋の発表があった。そのため、記帳と情報公開、このような消費者との信頼関係の上に立った新しいサービス体制が必要な時代が来ている。

 そこで、当園でも「栽培日誌」「防除記録」を中心としたインターネットによる情報開示を考えている。
 これからも、新しい時代にあった新しい経営方法を模索しつつ、ますます魅力有る葡萄園づくりに励みたい。

 私の目標は「世界の珍しい葡萄との出会い・あなたの旅の思いで造りのお手伝い」このキャッチフレーズとともに、さらに加えて「安全・安心システムと情報公開」により”消費者に安心を届ける「観光農園づくり」”である。
 
 こんなインターネット時代に、次の夢を育む今日この頃です。今日もまた早起きして、問い合わせやお礼メールや返事を打ち続けています。今、正にインターネット時代なんですね。(2002.10) 

 (2002年11月 ドメインを取得しました。)URL http://www.toyotama.com/  e−mail grape@toyotama.com