釈迦堂遺跡博物館では収蔵している縄文土器を文化庁 重要文化財修理補助事業として平成19年度から継続的に毎年数点ずつ修理をしています。修理と聞くと、自動車の修理、電気製品の修理のように壊れた部分を新しい部品と交換するというようなイメージを持たれるかもしれませんが、土器の修理の場合、過去に修復されて形になっている土器を一度解体し、破片の状態から再検証し、本来の姿へと組み立てなおしていく作業となります。
一般的に土器の修復は破片を接着剤で固定し、不足している部分を石膏で補填していきます。これらはホームセンターでも購入できる一般的な材料であり、再度修復が出来るという利点もあります。釈迦堂遺跡から出土した土器も、発掘調査後に洗浄されこのような手法で修復されています。しかし、すでに修復から30年が経過し、修復部分の劣化が進んでいます。接着剤の能力の低下や石膏部分の痩せ・ひび割れなどの劣化が見られるようになってきました。また、近年増加している地震等の自然災害の危険性が高まっているため、重要文化財である縄文土器を守り続けることも求められています。
このような中、当館では修理を行うことで重要文化財を後世に残す作業を続けています。
・解体前の修理内容の検討

資料を解体する前に、修理の方針を検討します。過去の修復の状態や同じ時期の類似する資料等を参照して、過度な修復にならないように復元部の方針を話し合い、最終的な土器の姿を共有して作業を進めるための準備を整えます。
・解体した部品の洗浄と仮組み

修理前の土器を解体し、石膏などの汚れを丁寧に取り除きます。洗浄された土器片たちを再度形にするために、仮組を行います。ここでは破片同士の位置関係や接合関係、文様の描かれ方等を確認し、全体的なバランスを慎重に調整していきます。
・充填作業と補彩

仮組で破片同士の位置関係を決定したのち、補填材を用いて土器の復元を行います。接着剤や補填材は長期的な保存と強度に優れたものを用いています。文様や装飾のパターンが十分に予測できない場合や、文様が連続しない場合は補刻をせず、確実な部分のみ補刻による復元を行います。
補刻後、土器の外側は全体のバランスを維持するため、現存部に合わせた補彩を行います。内部については現存部と充填部が明確になるように色の差を設けています。
以上の作業の間、現地で話し合いの場を設けながら慎重に作業を進めていき、形になったものが博物館に返却されていきます。

令和6年度は3点の深鉢形土器の修理を文化財保存事業(国庫補助)にて実施しています。
(令和7年3月更新)